はじめに:ゲーム攻略の3つの目標

ゲームをプレイする際、私たちは様々な目標を持って臨みます。私は、これらの目標を大きく3つに分類できると考えています。

  1. GOOD: ゲームシステムが実装として設定している評価基準(クリア、スコア、実績など)
  2. HAPPY: 個人的な楽しみ、自己満足、縛りプレイ、創造的な遊び方
  3. SOCIAL: ゲーム世界に対する倫理的・協力的な行動、他者との良好な関係構築

この考えは、ゲームデザインにおける「3つのレイヤー」——外的レイヤー(冒険や任務)、内的レイヤー(キャラクターの成長や感情)、テーマレイヤー(メッセージや問いかけ)——から着想を得ています。

ゲーム実況文化と目標の変化

近年のゲーム実況文化の隆盛により、単に「GOOD」な目標を達成するだけでなく、「HAPPY」な楽しみ方や「SOCIAL」な振る舞いが、プレイヤーや視聴者にとってより重要な意味を持つようになったと感じています。RTA(リアルタイムアタック)のような効率追求だけでなく、ロールプレイ、縛りプレイ、あるいはゲーム内のNPCや世界に対して倫理的に振る舞おうとする試みなどが、視聴者から多くの共感を呼んでいるのです。

HAPPYとSOCIALへのフィードバックの重要性

しかし、現在の多くのゲームシステムは、依然として「GOOD」な目標達成へのフィードバック(報酬、スコア、演出など)に偏って提供される傾向にあります。

プレイヤーが個人的な楽しみ(HAPPY)を追求したり、ゲーム世界で倫理的な行動(SOCIAL)を取ったりしても、それに対するシステムからの明確な反応や評価が与えられることは多くありません。

私は、これからのゲームデザインにおいて、この「HAPPY」と「SOCIAL」な行動に対しても、より豊かで意味のあるフィードバックを与えることが重要だと考えます。

  • HAPPYへのフィードバック: プレイヤー独自の創造的なプレイスタイルや、自己設定した目標達成に対して、ゲームが何らかの形でそれを認識し、ユニークな反応や報酬(必ずしもアイテムやスコアでなくても良い)を示す。例えば、特定の遊び方を続けることでNPCのセリフが変化したり、隠し要素が解放されたりするなど。
  • SOCIALへのフィードバック: ゲーム内の倫理的な選択や協力的な行動が、単なるパラメータ変動だけでなく、物語の展開、キャラクターの反応、世界の状況などに、より深く、時には予期せぬ形で影響を与える。プレイヤーの選択が、ゲーム世界の「良心」や「秩序」に貢献したことを実感できるような演出。

なぜ豊かなフィードバックが必要なのか?

HAPPYとSOCIALな行動への豊かなフィードバックは、以下のような効果をもたらします。

  1. プレイヤーエンゲージメントの向上: 自分の行動がゲーム世界に意味のある影響を与えていると感じることで、プレイヤーはより深くゲームに没入できます。
  2. 多様なプレイスタイルの肯定: 効率やクリアだけがゲームの価値ではないことをシステムレベルで示すことで、より多様な楽しみ方を奨励します。
  3. ゲーム体験の深化: 単なる目標達成(GOOD)を超え、個人的な満足感(HAPPY)や倫理的な考察(SOCIAL)といった、より高次の体験を提供できます。
  4. ゲーム実況・コミュニティの活性化: 視聴者は、配信者のユニークなプレイスタイルや倫理的な選択に対するゲームの反応を楽しむことができ、それが新たな話題や共感を生み出します。

まとめ:私の目指すゲームとの関わり方

ゲームは、システム(GOOD)を攻略するだけでなく、個人的な楽しみ(HAPPY)を見出し、時にはゲーム世界との関わり方(SOCIAL)を考える、多層的なメディアです。ゲーム実況文化は、そのHAPPYとSOCIALの側面をより際立たせました。

将来ゲーム開発の機会があれば、プレイヤーの多様な目標設定、特にHAPPYとSOCIALな行動に対して、より意識的にフィードバックを与える仕組みを重視し、その価値を体現できたらなと考えています。